清掃仕様書の作り方|発注者が範囲と頻度をそろえる手順
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
清掃仕様書は、作業範囲、頻度、品質基準、報告方法を先に定め、同じ条件で見積を受け取るために作成します。総額だけを比べると、回数や対象外の違いが見えにくく、発注後に追加作業の認識がずれることがあります。
仕様書は清掃を依頼するための文書であると同時に、日々の品質確認と変更管理の基準です。本部の共通条件と拠点ごとの例外を分け、誰が読んでも同じ範囲を理解できる状態にします。
清掃仕様書を作る全体の流れ
清掃仕様書は、施設の現況を整理してから、作業・品質・報告の順に決める文書です。比較の土台になるため、依頼先ごとに内容を変えず、発注者側で確定した版を渡します。
| 段階 | 決めること | 残すもの |
|---|---|---|
| 現況整理 | 施設、区域、利用時間、立入条件 | 区域一覧・現況メモ |
| 共通化 | 全拠点に共通する範囲と品質 | 共通仕様 |
| 例外整理 | 拠点固有の時間帯・対象外 | 例外表 |
| 比較準備 | 見積の前提と質問 | 配布用仕様書・比較表 |

対象施設と現況を棚卸しする
最初に、エントランス、執務室、給湯室、トイレなど、清掃対象となる区域を区切ります。床材、家具の配置、利用人数、作業可能な時間帯、入館手続きなどを区域ごとに書き出すと、範囲だけが先行する状態を避けられます。
日常清掃、床面の作業、窓まわり、ごみ集積スペースなどは、同じ名称でも対象が異なることがあります。清掃に含めない設備や、別契約で扱う業務も同じ一覧に置き、依頼範囲の境目を読めるようにします。
図面がある場合でも、実際に施設を歩いて確認すると、出入口の動線、備品の置き場所、清掃用具を保管できる場所などの条件が見つかります。現況確認の日時と確認者をメモしておくと、後から仕様書を更新する際に、どの時点の状態を前提にしたかをたどれます。
共通仕様と拠点例外を分ける
多拠点では、全拠点に共通する作業を本文にまとめ、利用時間や入退館方法のように拠点ごとに異なる条件は例外表に分けます。この形なら、共通仕様を更新しても、すべての拠点の個別事情を書き直す必要がありません。
共通化する項目には、区域名の付け方、品質基準、報告書の形式、連絡先を置きます。多拠点の条件をそろえる考え方は、多拠点清掃の一括発注の進め方でも確認できます。
ステップ別に仕様を決める
作業条件は、範囲、頻度、品質、報告の四つに分けると確認しやすくなります。清掃会社が提案する内容を受け取る場合も、この四つに戻して記載漏れや条件差を確認します。
作業範囲と頻度を記載する
区域ごとに、作業名、対象物、頻度、実施時間帯、資機材の扱いを対応付けます。たとえばトイレなら便器、洗面台、床、ごみ箱を別々に示し、共用部でも清掃する時間と立入不可の時間を併記します。
頻度は「適宜」だけで終えず、日、週、月などの単位と、実施しない日の扱いまで明確にします。依頼前に渡す条件の整理は、清掃見積の依頼時に伝えるべき情報と合わせると、見積の前提をそろえやすくなります。

品質基準と是正期限を決める
品質基準は「きれいにする」のような印象語ではなく、確認する場所と状態を組み合わせて書きます。たとえば床のごみ、洗面台の水滴、ごみ袋の交換、補充対象の不足など、巡回時に確認できる項目に分けます。
不備が見つかった際の連絡先、連絡方法、再確認の方法も決めます。是正期限は施設の利用状況で変わるため、一律の時間を置くより、通常時と緊急時の連絡経路を区別しておくことが重要です。

報告形式と作業証跡を決める
作業報告では、実施日、区域、作業内容、未実施の理由、連絡事項を同じ並びで残します。写真を使う場合は、どの区域をどの向きから記録するかを決め、個人情報や利用者の写り込みを避ける運用もあらかじめ定めます。
報告を受け取る担当者と、内容を確認して是正を依頼する担当者が異なる場合は、役割も仕様書に記載します。作業の実施記録と品質検査の記録を分けると、完了報告だけでは見えない改善事項を管理できます。
報告書の書式は、拠点ごとに自由な様式へ変えず、共通項目を固定します。版を更新したときは、変更日、変更した項目、適用開始日を残し、以前の報告がどの仕様を前提にしたものかを確認できる状態にします。
法令上の事項と契約事項を区別する
清掃仕様には、法令上の維持管理に関わる事項と、発注者が契約で決める事項があります。対象施設に当てはまるかを確認したうえで、法令上の事実を契約上の作業回数や工法と混同しないことが大切です。

特定建築物に該当する場合の記載
特定建築物に該当する場合、建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則第4条の5第1項は、日常行う清掃に加えて大掃除を6か月以内ごとに1回、定期的かつ統一的に行うことを定めています。これは日常清掃の回数、作業項目、工法を一律に定めるものではありません(同規則第4条の5第1項、2026-09-05確認)。
同法第10条と同規則第20条では、特定建築物の清掃の状況などを記載した帳簿書類を備え、5年間保存することが定められています。対象性を含む個別の判断は、所管窓口や専門家へ確認したうえで、仕様書には確認済みの要件だけを反映します。
日常清掃の回数を契約で決める理由
日常清掃の回数は、法令の回数をそのまま転記して決めるものではなく、施設の利用状況や汚れやすい区域に応じて契約で決めます。来客が多い共用部と、利用が限られる執務区域では、同じ頻度が適切とは限りません。
発注者が回数と対象を先に決めることで、各見積の総額が何を前提にしたものかを読み取れます。費目の考え方は、オフィス清掃の費用を比べる方法で整理しています。
よくある失敗と見直し方
仕様書は一度作成して終わりではなく、利用状況や契約内容が変わった時点で見直す文書です。見積時の条件と日常の運用を比べ、例外が恒常化していないかを定期的に確認します。

範囲が曖昧なまま見積を取る失敗
「共用部一式」や「必要に応じて」とだけ書くと、依頼先ごとに含める作業が変わり、総額の差を説明できなくなります。区域、対象物、頻度、時間帯、資機材、ごみの扱いを比較表の列にして、見積を受け取る前に空欄を減らします。
床みがき機による作業や樹脂ワックスの扱いのように、日常作業と分けたほうがよい内容もあります。追加作業として扱うなら、発生条件と依頼方法を別項目にします。
変更・欠員時の扱いを残さない失敗
営業時間の変更、レイアウト変更、欠員、臨時の汚れなどは、日常運用で起きる前提で扱います。連絡を受ける担当者、変更を確定する担当者、仕様書へ反映する方法を分けておくと、口頭の合意だけが残ることを防げます。
見直し時には、前回の仕様書、作業報告、品質確認の記録を並べます。変更後の仕様書を再配布し、比較表も同じ版に更新してから次の見積や契約更新に使います。
まとめ
清掃仕様書では、区域と対象物を棚卸しし、範囲・頻度・品質・報告を順に決めます。多拠点では共通仕様と例外表を分け、見積時と契約後で同じ条件を参照できるようにします。
特定建築物に関わる要件は、対象性を確かめてから記載し、日常清掃の具体的な回数は施設の実態に合わせて契約で決めます。更新履歴と作業証跡を残すことが、条件のずれを早期に見つける基盤になります。
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よくある質問
- Q. 法令が日常清掃の回数を決めていますか
- 特定建築物では、日常行う清掃に加え、大掃除を6か月以内ごとに1回行う定めがあります。ただし、日常清掃の回数・作業項目・工法は一律に定められておらず、仕様書で決めます(建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則第4条の5第1項、2026-09-05確認)。
- Q. 拠点ごとに仕様書を分ける必要はありますか
- 全拠点に共通する範囲・品質基準・報告形式は共通仕様にまとめ、利用時間や立入条件などを例外表にします。共通と例外を分けることで、拠点ごとの違いを残しながら、同じ条件で比較できる状態を保てます。
- Q. 事業者に仕様書作成を任せてよいですか
- 作業内容の提案を受けることはできますが、比較する条件と発注範囲の最終確認は発注者側で行います。同じ仕様を複数の依頼先へ渡せる状態に整え、提案内容は共通の比較表に戻して確認します。
出典
- 1.建築物における衛生的環境の確保に関する法律(laws.e-gov.go.jp)
- 2.建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則(laws.e-gov.go.jp)
- 3.建築保全業務労務単価(mlit.go.jp)