清掃クレーム対応フロー|発注者が再発防止まで確認する手順
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
清掃への苦情は、受付で事実を取り違えず、一次対応と恒久的な見直しを分けることで、次の検査や仕様変更へつなげやすくなります。発注者は不満の内容だけを急いで判断せず、どこで、いつ、どのような状態が確認されたかを記録の起点にします。
苦情の受付簿、作業報告、現場写真、検査結果が別々に保管されていると、同じ事象でも説明が食い違います。受けた連絡を一つの案件番号にまとめ、対応の途中で分かった事実と利用者の要望を区別しておくと、担当者が替わっても判断の経過を追えます。
| 苦情対応の段階 | 発注者が確かめること | 次へ渡す記録 |
|---|---|---|
| 受付 | 場所・時点・利用への影響 | 案件番号と受付内容 |
| 一次対応 | 緊急性と応急措置の要否 | 実施時刻と連絡先 |
| 再発防止 | 検査項目を変える必要性 | 是正内容と再確認日 |
受付直後に残す情報
受付時点の記録は、責任の所在をその場で決めるためではなく、現場を再確認する条件を失わないためのものです。電話や口頭の連絡であっても、受付者、受信時刻、対象区域、発見した人、利用への影響を同じ様式に転記します。
場所と発生時点を確認する
廊下、洗面所、出入口、執務室のように区域を特定し、フロア名や近くの設備も添えます。「汚れている」という表現だけでは作業範囲を決められないため、汚れ・臭い・濡れ・ごみの残りなど、見た状態を受付記録に記します。安全上の危険がある場合は、現場確認より先に利用制限や応急処置の要否を施設の窓口へ伝えます。
発生時点には、連絡を受けた時刻と状態が見つかった時刻の両方があり得ます。直前の清掃完了時刻、利用が集中した時間帯、天候や催事などの例外も分けて残すと、後から作業日報と照合しやすくなります。現場を確認した担当者と確認時刻も追記し、推測で書いた内容には確認済みの事実と分かる印を付けません。

利用者の要望と事実を分ける
利用者から「すぐに清掃してほしい」と求められた場合、その依頼は優先度を決める重要な情報です。ただし、要望どおりの対応が仕様上の正解かは別に確認します。受付欄では、利用者が希望した対応、見聞きした状況、施設側が確認した状態を別項目にし、伝聞を現場確認済みとして扱わないようにします。
例えば、再清掃の要望を受けた後に現場で汚れが確認できなかったときは、要望を否定したことにはなりません。利用状況の変化や既に行われた応急対応を確認し、確認できた範囲と未確認事項を併記します。説明の根拠が整理されていれば、利用者への返答も作業員への依頼も感情的なやり取りになりにくくなります。

一次対応から原因整理へ進む
連絡を受けた直後に必要な安全確保と、同じ事象を繰り返さないための検討は、期限も担当も異なります。一時的な対応を完了と見なさず、どの記録を見て原因の仮説を検討するかを決めてから次の段階へ進めます。
緊急対応と恒久対応を分ける
転倒につながる水濡れ、衛生上の懸念、来訪者の通行を妨げる状態などは、原因が確定していなくても応急の清掃や立入注意が必要になることがあります。その依頼では、対象範囲、実施希望時刻、作業後に誰へ連絡するかを明らかにします。緊急の追加作業を行った場合も、通常の定期作業の報告欄とは分けて記録します。
恒久対応では、区域の使われ方、作業頻度、資機材、巡回の時間、報告の受け方に不足がなかったかを見直します。原因が一つに定まらない場合は、断定せずに再確認の期限を置きます。清掃会社へ原因の説明を求める際には、苦情内容だけでなく、現場確認の結果と該当する仕様書の版を渡すと、対応案を比較できます。

仕様と作業報告を照合する
現場の状態を確認したら、契約の仕様書にある対象区域、作業内容、実施時期、除外条件を見ます。仕様に記載がない場所を通常作業として求めていないか、反対に記載された作業が報告から抜けていないかを、一件ごとに確かめます。見積条件や作業計画に補足がある場合は、その文書の作成日も併せて確認します。
作業報告には、実施者名だけでなく、未実施・延期・利用者都合などの例外が残ると照合しやすくなります。報告に記載がないからといって未実施と決めつけず、連絡帳や管理室の記録を確認して事実関係を補います。仕様の解釈を変える必要が出たときは、苦情案件の記録と契約変更の手続きを混ぜず、それぞれの承認経路を通します。

再発防止を確認する
是正を実施しただけでは、発注者が確認すべきことは終わりません。実施内容が対象区域の状態に合っていたか、利用者への説明が必要か、同じ条件で再び確認する日はいつかを、案件ごとに決めます。
是正内容と確認日を決める
是正内容には、再清掃、作業手順の変更、報告項目の追加、巡回時刻の見直しなどがあります。何を行うかだけでなく、誰が完了を確認し、どの状態になれば是正済みと判断するかを記載します。作業会社の完了報告と施設側の受領確認を同じ日に必ず行えるとは限らないため、それぞれの時点を分けます。
確認日は、利用が通常に戻る日や次回の定期作業に合わせると、対策の効果を見やすくなります。短期間で再発したときは、前回の是正内容、区域、時間帯を並べ、単に「再発」とだけ残さないことが重要です。確認の結果が未了であれば、完了報告を待つ理由と次に連絡する担当を記録に残します。

次回検査へ反映する
検査表に追加する項目は、苦情を受けた場所だけを機械的に増やすものではありません。発見が遅れた理由が巡回不足にあったのか、状態の判定基準が曖昧だったのかを整理し、次回に見る観点を具体化します。例えば、通行量が多い入口なら、検査時刻と確認範囲を明記した方が比較しやすくなります。
繰り返し確認する事項は、写真の撮り方、報告の締切、確認者の役割もそろえます。検査記録を蓄積しても、前回との比較条件が違えば改善の有無を判断できません。結果を仕様改定の候補として扱う場合は、検査の記録、委託先との協議、変更の承認を別の文書として残します。
苦情の件数だけを評価指標にすると、報告しにくい運用を生むおそれがあります。受付から確認までにかかった時間、是正の内容、再発の有無を案件ごとに振り返り、件数が増えた理由も読み取れるようにします。施設の利用条件が変わった場合は、以前の記録を基準にせず、検査項目と頻度を改めて決めます。
連絡経路を一本化する
苦情の連絡先が管理室、テナント担当、現場作業員に分かれると、同じ依頼が重複したり、作業結果が発注者に届かなかったりします。緊急時の連絡先と通常時の受付窓口を区別し、案件の進捗を集約する担当を決めます。
現場への直接指示を避ける
施設側が作業員へ直接依頼すると、その場の対応は早く見えても、追加作業の承認、範囲、費用、実施結果が契約上の記録から外れるおそれがあります。緊急の安全確保を除き、依頼は定めた窓口へ伝え、現場で伝えた内容も窓口に共有する運用が適します。
窓口担当は、依頼を受けた時点で仕様内の対応か、追加の判断が必要か、誰が確認を返すかを切り分けます。清掃仕様書の作り方、清掃見積の依頼時に伝えるべき情報、オフィスビルの清掃発注ガイド、清掃インスペクションの設計も併せて確認すると、苦情対応を日常の発注管理へ戻しやすくなります。
苦情の受付票には、申出を受けた日時だけでなく、発生した区域、利用状況、見えた状態、連絡を受けた人を分けて残します。利用者の表現を要約する場合にも、汚れ、臭い、備品、作業時刻のどれに関する話かを混ぜません。最初の記録が具体的であれば、委託先へ伝える依頼内容と後日の説明で確認する対象を誤りにくくなります。
現地を見る担当者は、受付内容を読んでから区域を確認し、写真、作業日報、巡回記録のどれで状態を確かめるかを決めます。すでに清掃済みの場所であれば、発生時点の状況と確認時点の状況を一つの評価にしません。利用者の動線や催事の有無も添えると、通常の作業条件との違いを検討できます。
委託先への連絡では、原因の推測を先に共有するより、確認してほしい事実、期限、連絡を受ける窓口を明確にします。再清掃が必要な場合は、実施する範囲、利用を止める必要があるか、完了の確認者を同時に決めます。緊急対応と恒久的な改善を別の記録にすると、当日の復旧と次回以降の予防を混同しません。
同じ区域で申出が続くときは、件数だけを並べず、曜日、時間帯、作業順、利用の集中と照らして傾向を見ます。仕様書にある頻度や完了基準と実際の確認結果に差があれば、変更の必要性を発注者側でも検討します。月次の振り返りでは、解決済みかどうかに加え、未確認の事項と次回に確認する日を残すと対応が途切れません。
苦情の連絡先を一つに集めても、現場の作業者へ即時の指示を出さない運用は保ちます。判断を担う窓口が、契約上の連絡経路と照合して依頼を出せば、口頭の依頼漏れや担当外の作業を抑えられます。受付から完了報告までの時刻を追える形にしておくと、次の委託先評価にも使えます。
苦情対応の完了は、再清掃を実施した時点ではなく、受付内容に対して何を確認し、どの結果を伝えたかまで追える状態で判断します。利用者へ返答する担当と、委託先の報告を受ける担当が異なるときは、伝達内容に差が出ないよう記録を共有します。対応の期限を過ぎた案件は、理由と新たな確認予定を明記して、未完了のまま埋もれないようにします。こうした記録を基に定例会で扱う論点を選べば、個別の申出を品質改善へ結び付けられます。
月次の確認では、個々の苦情を匿名化した上で、区域、発生時刻、対応までの時間、是正後の状態を並べる方法があります。件数の増減だけで担当者や委託先を評価せず、受付しやすさ、利用状況の変化、検査方法の見直しが必要かを検討します。共有する範囲と保管期間は、施設の情報管理ルールに従います。
まとめ
清掃の苦情対応では、受付時の事実、応急対応、仕様との照合、是正後の確認を順番に残すことが重要です。連絡経路を集約し、検査記録へ反映するところまで進めることで、個別の苦情を次の発注条件の改善に生かせます。
選び方・比較の記事一覧と記事一覧も活用し、苦情対応に関係する確認項目を整理してください。
よくある質問
- Q. 苦情を受けたら最初に何を確認しますか
- 対象の場所、発見時刻、見た状態、利用者への影響、緊急性を先に記録します。受付者の推測と利用者の要望を分け、現場を確認する担当と連絡先を決めてから、作業報告や仕様書を照合します。
- Q. 再清掃だけで終えてよいですか
- 安全上の理由などで再清掃が必要な場合は、まず実施します。その後に、仕様、作業報告、検査、連絡経路のどこに認識差があったかを確認し、必要なら次回の確認方法や承認手続きを見直します。
- Q. 施設側が作業員へ直接依頼してもよいですか
- 緊急の安全確保を除き、定めた窓口を通す方法が適します。依頼内容、承認者、実施結果が追えるため、日常作業との重複や、追加作業の扱いが曖昧になることを防げます。
出典
本記事の出典は に内容を確認しています。
- 1.建築物における衛生的環境の確保に関する法律(laws.e-gov.go.jp)
- 2.建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則(laws.e-gov.go.jp)