法令・制度解説

特定建築物の清掃記録|保存期間と発注者の受領・確認を整理する

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

10分
目次

特定建築物では、清掃等の状況を記載した帳簿書類を備え、5年間保存することが定められています。発注者は清掃会社から日報を受け取るだけでなく、法令上の対象、施設内での受領、保管、検索、未提出時の確認を対応させます。

帳簿書類の保存と、委託契約のために任意に残す作業記録は、目的が異なることがあります。どの記録が法令上の対象かを確認し、施設の運用に必要な資料を別に整理すると、記録を増やすだけで確認できない状態を避けられます。

建築物における衛生的環境の確保に関する法律第10条と同法施行規則第20条を確認します。法律の改正日 2022-06-17、法律の現行版施行日 2025-06-01、施行規則の現行版施行日 2026-10-01、確認日 2026-10-04です。5年間保存する対象は施行規則20条1項1号と4号に限られ、2号と3号は備付けの対象です。

特定建築物の記録管理確認する単位施設側の担当
清掃・掃除の実施対象建物と実施年月日報告の受領者
防除等の資料条文ごとの記録区分帳簿の整理者
保存・検索期間と保管場所閲覧・確認の担当

保存対象を確認する

清掃に関係する資料は、作業日報、検査記録、衛生管理の帳簿、委託契約の報告など、名称が似ていても内容が異なります。まず、特定建築物として備え付ける帳簿書類に何を記載するかを確認し、委託先への報告依頼に反映します。

清掃状況の記録を整理する

施行規則20条1項1号は、空気環境の調整、給水及び排水の管理、清掃、ねずみ等の防除の状況を記載した帳簿書類を備えることを定めています。発注者は、清掃会社の書式をそのまま受け取るかどうかではなく、対象建築物、実施日、実施した内容を確認できるかを見ます。区域名、作業区分、例外の扱いも、施設側の帳簿と照合しやすい呼び方にします。

日報に複数施設の情報が混在する場合は、対象建物を特定できる形で受領します。作業が延期又は未実施なら、その理由と実施予定を記録することで、空欄を完了と誤認しません。委託先の報告を根拠に帳簿書類を整える場合も、施設側で受領日と確認者を残すと、後から経過を確認できます。

特定建築物の清掃状況記録を整理する図
特定建築物の清掃状況記録を整理する図

防除等の記録と分ける

清掃の実施状況と、ねずみ等の防除、空気環境、給水などの記録は、同じファイルへ保管されることがあっても、法令上の項目を混同しないようにします。施行規則20条1項の各号によって、保存対象と備付けの対象が異なるため、帳簿書類の見出しや索引で区別します。

一つの委託先が清掃と防除の両方を行う場合でも、報告書の作業日、対象場所、作業内容を分けて受領します。防除に関する調査や措置の記録を清掃日報だけで代用したり、逆に清掃の実施状況を防除の記録として扱ったりしません。資料の分類を決める担当と、最終的に帳簿を確認する担当も明らかにします。

清掃記録と防除等の記録を分ける図
清掃記録と防除等の記録を分ける図

5年保存へつなぐ

保存期間を守るには、資料を受け取った後に置き場所を決めるだけでは足りません。誰が帳簿書類を完成させ、どこに保管し、必要なときに対象期間の情報を検索できるかを決めます。

受領者と保管場所を決める

清掃会社からの報告を受ける担当と、帳簿書類を保管する担当が同じとは限りません。受領者は、対象建物、実施日、報告内容が揃っているかを確認し、不足があれば委託先へ返します。保管担当は、受領済みの資料が帳簿書類へ反映されたか、保管先が変わっていないかを確認します。

電子ファイルで保管する場合は、紙の帳簿と同様に、対象建物と年月でたどれる名称・フォルダ構成にします。保管先へのアクセス権限、担当交代時の引継ぎ、バックアップの方法は施設の規程で決めます。原本性や電子保存の個別論点がある場合は、施設の法務又は専門家へ確認します。

清掃記録の受領者と保管場所を決める図
清掃記録の受領者と保管場所を決める図

検索できる単位で残す

帳簿書類を検索するときは、少なくとも対象建築物、記録の種類、実施又は確認の日、作成者又は受領者を手掛かりにできる状態が望まれます。ファイル名だけに情報を詰め込みすぎず、索引や一覧表で保管場所をたどれるようにします。保存年限の管理では、期間の起点が分かる記録も必要です。

監査や施設内の確認で資料を求められた場合に、担当者の記憶だけで探す運用は続きません。帳簿と委託先報告の関係が分かる一覧を持つと、未提出や差し替えの履歴も確認できます。建築物環境衛生管理基準の清掃を参照し、実施記録と維持管理の確認を結び付けます。

特定建築物の清掃記録を検索可能に残す図
特定建築物の清掃記録を検索可能に残す図

委託先への依頼事項

帳簿書類を施設側で整える場合、清掃会社の報告に必要な項目が欠けると記録が完成しません。契約や仕様で求める報告項目を、法令上の記録と施設の検収目的に分けて伝えます。

報告の項目をそろえる

報告書には、対象建物、対象区域、実施日、実施内容、未実施又は例外の有無、報告者を記載する方法があります。帳簿へ転記する事項と、施設側が清掃品質を確認するための写真や指摘事項は、同じ欄に無理にまとめません。月次報告を使う場合も、実施日が追えるかを確認します。

様式を変更するときは、古い様式の情報がどこまで使えるか、新しい様式をいつから用いるかを周知します。清掃仕様書の作り方と清掃インスペクションの設計も参照し、報告・検査・帳簿の役割を分けたうえで、必要な項目を定めます。

委託先へ清掃報告の項目をそろえる図
委託先へ清掃報告の項目をそろえる図

未提出時の確認を決める

報告が届かないときは、未実施と決めつけず、提出期限、送付先、送信エラー、作業予定の変更を確認します。受領者が確認する期限と、委託先へ再提出を依頼する窓口を決めると、月末に不足が集中しにくくなります。未提出の期間も一覧に残し、後で受け取った資料と対応させます。

帳簿書類の記載に必要な情報が不足する場合は、記録を推測で補わず、確認できた範囲と補完を依頼した内容を残します。継続して報告が不足するなら、仕様、報告様式、連絡経路のどこに問題があるかを委託先と協議します。

特定建築物を確認する

帳簿書類の整理に入る前に、その建築物が特定建築物に当たるかを一次資料で確認します。施設の通称や清掃面積だけで判断せず、建築物の用途と延べ面積を根拠資料で確認します。

用途と面積で判断する

特定建築物の該当性は、特定用途に供される部分と延べ面積の要件をもとに判断します。複合施設では、全体の名称ではなく、実際の用途と対象となる部分を確認します。用途変更、増床、改装などがあった場合は、過去の判定をそのまま使わず、関連資料を見直します。

ビル管法と特定建築物を参照し、該当性の確認と清掃契約の区域設定を混同しないようにします。個別の用途区分や面積の判断に疑問があるときは、所管の行政機関又は専門家に確認します。

特定建築物の記録を扱う担当者は、清掃の報告書、点検結果、帳簿への記載事項を、作成した部署ごとではなく確認目的ごとに整理します。施行規則第20条で保存の対象となる記録と、備え付けて管理する記録は、同じ保管場所に置いても区分が分かるようにします。年度や担当者が替わっても探せるよう、記録の名称、対象期間、区域を索引へ記載します。

紙で受け取った報告を電子的に保管する場合は、原本の扱い、登録日、入力者、参照できる人を社内で定めます。修正が必要になったときには、元の記載を見えなくするのではなく、修正した理由と時点が追える形にします。清掃日報に記載された内容を別の台帳へ転記するときは、転記漏れがないかを定期的に照合します。

保存期間を確認する場面では、作成日、検査日、対象となる項目を基に、いつまで保管するかを判断します。複数の法令や契約上の保存条件が関係する資料は、最も短い期間だけで処分時期を決めないよう注意します。保管の責任者と廃棄を承認する人を分ければ、必要な記録を誤って失うリスクを抑えられます。

委託先から受ける清掃報告は、特定建築物に関する帳簿へ必要な事項を記すための材料になることがあります。報告様式に区域、日時、実施内容、異常の有無が不足していると、後から確認する際に記録のつながりが切れます。発注者は、契約で求める報告と法令上管理する記録の役割を分けて、必要な情報を受け取ります。

用途や面積の変更で該当性を見直すときは、建築物の図面、用途区分、届出に関する資料と現状を照合します。清掃の実施記録を整えていても、対象となる建築物かどうかの判断が変われば管理方法を再確認する必要があります。定例の点検では、未提出の報告、読み取れない記載、保存先が不明な資料を先に洗い出します。

清掃記録の管理では、帳簿に必要な情報を後から集め直すことにならないよう、委託先の報告様式を受領前に確認します。区域名や実施日が施設側の管理資料と異なる表記になっている場合は、対応表を作って参照先を明らかにします。保存する資料が増えたときにも、法令上の記録、契約上の報告、社内の確認メモを混ぜずに保管します。定期的な棚卸しで不足資料を把握すれば、保存期間の満了前に必要な補完を依頼できます。

記録の整理では、帳簿書類を受け取った事実と、内容を確認して保管対象へ分類した事実を分けて残します。担当交代や保管場所の変更があっても、対象建築物、実施日、記録区分から追える状態を保つと、未提出資料の確認先を明らかにできます。

保存の実務では、帳簿書類を更新するタイミングと、委託先から届く報告の締切を対応させます。年度替わり、組織変更、保管場所の移転、報告様式の改定があるときは、過去の記録を検索できる状態が保たれているかも確認します。施設内の確認で不足を見つけた場合は、どの資料が足りないのか、誰へ補完を依頼したのか、いつ受領したのかを履歴に残します。

まとめ

特定建築物の清掃記録では、保存対象、受領者、保管場所、検索方法、未提出時の確認をつなげます。施行規則20条の各号を混同せず、委託先の報告と施設側の帳簿書類を対応させることが、保存を続けるための基礎です。

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よくある質問

Q. 清掃会社の作業日報をそのまま保存すればよいですか
日報が対象建物、実施日、実施内容を確認できる形式なら、帳簿書類を整える資料として使えます。ただし、法令上の記載対象と施設内の検収目的を分け、受領・保管・検索の方法まで決めます。
Q. 保存期間はいつから数えますか
特定建築物の帳簿書類について5年保存が定められていることを前提に、記録の種類と作成時点を追える形で管理します。個別の保管期間の起点や施設規程との関係に疑問がある場合は、一次資料又は専門家に確認します。
Q. 特定建築物でない施設も同じ保存が必要ですか
特定建築物に関する法令上の保存要件と、施設が契約・規程により任意に残す記録は区別します。まず用途と面積で該当性を確認し、そのうえで施設に必要な清掃・検収の記録を決めます。

出典

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